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駐車場に向かうと、すでに梢さんは車の中で待っていた。

助手席に座ると、くすっと笑われた。

「お疲れ様、若様。上手くいったようで、安心したわ」

「えっ?」

なっ何でセックスしたことがバレたんだ?

オレが眼を白黒させていると、梢さんは本当におかしそうに笑った。

「若様、お風呂入ったでしょう? 良い匂いがしているわよ」

「あっ…」

セックス後、後処理も兼ねて梨奈とお風呂に入ったんだっけ。

「それで、どうだった?」

「梨奈は仕事を辞めるそうです。買う方も、売る方も」

「-そう。ちょっと残念だけど、それもしょうがないわね」

梢さんは眼鏡の奥の目を一瞬細めたけれど、理解したように頷いた。

「こう言ってはなんだけど、梨奈ちゃんみたいなタイプはウチの仕事には合わないわ。早く足抜けして、正解よ」

「よく言いますね。今まで仕事を斡旋してきた人が言っても、説得力ないですよ?」

「仕事は仕事よ。いちいち個人的な感情を持っていては、勤まらないわ」

…それは一理ある。

「まあだからこそ、若様のような存在はありがたいのよ。損得抜きで、梨奈ちゃんを思いやってくれたでしょう?」

「…そこまで善人ではありませんよ。まっ、足抜けさせたことは、自分でも正解だとは思いますけど」

「そうね。でもまあ社長も納得するでしょう。他ならぬ可愛い一人息子の仕出かしたことならば、喜んで受け入れるでしょうし」

「ご冗談を。まっ、説教されるいわれもないですけどね」

フフッと笑いながら、梢さんは車を動かした。

…すでに外は茜色に染まっていた。

「今日はこのまま家に送るわ。それともどこかで食事して行く?」

「会社の経費で落ちるなら、焼肉でも食べたいですね。肉体的にもそうですが、精神的にも疲れてしまったので」

「OK。あたしのお気に入りの焼肉店に連れてってあげる。到着するまで、寝ててもいいわよ?」

実はちょっと眠気に襲われていたりする。

梢さんには何でもお見通しにされてしまうな。

苦笑しながら、オレは欠伸を堪えた。

「じゃあお言葉に甘えて」

「ええ、今しばらくはオヤスミなさい」

オレはシートに深く身を沈めて、眼を閉じた。

最初は嫌がっていた仕事だけど、梨奈のように救ってあげられる人がいるならば、案外この仕事も悪くないんじゃないかと思った。

できるならこの後もまともな人と接したかったのだが…それは叶わぬ願いだと実感するのは、このすぐ後だった。


【終わり】
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