FC2ブログ
 桔梗さんの管理している部署は、『性』のことに関してのカウンセラーとマッサージ師を束ねている。
 ちなみに梢さんは客にウチの社員を派遣する部署を担当している。
 なので今までは梢さんの部署で学ぶことが多かったのだが、そろそろ別の勉強もしといた方が良いだろうとはオレも思っていた。
「カウンセリングとマッサージ、どっちの方?」
「梢が何時戻ってくるか分かりませんので、短時間の方のマッサージをお願いします」
「分かった。どこに行けば良い?」
「このビルの20階に行き、由香里(ゆかり)という女性に会ってください。彼女は女性マッサージ師ですが、腕は立つ方ですから」
「あいよ。梢さんから何か連絡があったら、言ってくれ」
「かしこまりました」
 恭しく礼をする桔梗さんに背を向け、オレはエレベータに向かった。
 ケータイを取り出して見るも、梢さんからの連絡は入っていなかった。
 社長の一人息子であり、現在は部下で教え子のオレに連絡を寄越さないのだから、よっぽど現地は大変なんだろう。
 少し寂しい思いもあるけれど、コレもまた、社会勉強の一つだ。
 気持ちを切り替え、オレはエレベータに乗り込んだ。
 …この後の恐怖も知らずに。



 20階に到着すると休憩用のフロアがあり、その奥に白い扉があった。
 扉にはプレートがあり、【マッサージ部門】とあった。
「結構分かりやすいよな、ウチのビル」
 フロアごとに部門が分かれていて、案内マップはないものの、一度教えられれば迷わずに来れるのは良い。
 …別に方向音痴というわけではないが、流石に会社の社長の息子が、自社ビルで迷っている姿をさらすのはどうかと思う。
 まあ幹部達はオレの顔を知っていて、毎日誰かとは顔を合わせる。
 そしたら向こうから話かけてくれるので、困ったことがあれば彼等がすぐに対処してくれる。
 …と言うのも、ダメだよな。
 完璧に自立するまで、少し甘え癖を直した方が良いのかもしれない。
 そもそも梢さんの影響もある。
 彼女は親父の秘書ではあるものの、オレが高校を卒業するまでは彼女がずっと傍にいてくれた。
 忙しい親父の代わりを務めてくれていたんだろう。
 なのでオレは彼女を恋愛対象には見られない。
 下手な男より、よっぽど男らしいからだ。
「まっ、頼りにはなるけどな」
 けれど流石にこの歳で学生の時と同じことを繰り返しているようでは、進歩がないと言える。
「もうちょっとしっかりしよう」

スポンサーサイト
[PR]

[PR]

Secret

TrackBackURL
→http://tukimiyamituya.blog55.fc2.com/tb.php/56-11d3cb90