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 けれどオレは昔の梢さんのイメージが、ガラガラと音を立てて崩れていくのが、頭の中に浮かんでいた。
「ええ、まあ…。今回は特例みたいなもんです」
「そうよねぇ。あの梢ちゃんが、大事に育ててきた若様を簡単に手放すことはしないものねぇ」
 うんうんと頷かれても、オレはどう答えたらいいのか分からず、アハハと苦笑した。
「まあとりあえず、梢ちゃんが帰ってくるまではわたしが指導者だから。よろしねぇ、若様」
「…はい、よろしくお願いします」
 こうなれば、もうとっとと学ぶしかない。
 そして梢さんが一日でも早く、帰還することを願おう!
「じゃあまずはぁ、若様、服を脱いでくださいな」
「………はい?」
 思考が一瞬、停止した。
「あっちの部屋で、服を脱いでね。カゴの中にタオルがあるから、それで前を隠して、ベッドに横になったら声をかけてください」
 ―考えること、三十秒。
「…もしかして、マッサージの体験ですか?」
「そぉ。実際どういうマッサージをしているのか、若様に体験してもらいまぁす」
 …由香里さん、大事な部分を抜かさないでください。
「えっ? でも下着もですか?」
「そうよぉ。ウチは全身マッサージもするから」
 確かにエステとかだと、女性達はそれこそ下着まで脱ぐみたいだし。
「分かりました。どの部屋ですか?」
「こっちよ」
 由香里さんがさっき出て来た扉の中に入ったので、オレも続く。
 そこは事務室みたいだった。
 電話やパソコンが何台かあり、多分、ここで客の注文を受けたりするんだろうな。
 その奥の扉を開くと、廊下があった。
 そして目の前に、いくつもの扉がある。
「この奥の部屋は個室になっているのぉ。さっきの部屋では大人数を相手に教えるけれど、こっちは個人的に使うのよ。主にテスト用に使用しているわ」
 マッサージを教わった後、それがちゃんと身に付いているかチェックする為の部屋なんだろう。
 …こういうところもプロ並みだよな、うん。
 梢さんは右から二番目の部屋の扉を指さした。
「あそこで行うからぁ、着替え終わったら声をかけてね」
「分かりました」
 扉の中は、思ったより広かった。
 畳にすると十畳ぐらい。
 壁にはいろいろな薬品や道具が並んでおり、ベッドもある。
 ベッドの脇にはカゴがあって、白いタオルが一枚入っていた。
 壁にはハンガーがあり、オレはスーツをそこへかけた。
 下着類は…恥ずかしいので入れた後、ベッドの下に隠し入れた。

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