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<会社の正体!>



「お前、童貞か?」
「………は?」
 ドウテイ?
 …オレ、耳、悪くなったのかな?
 思わず耳の穴を指でいじる。
「いや、だから。女性と肉体関係を持ったことはあるのかと聞いている」
 …そう聞いてくる親父の顔は、今まで見たことがないぐらい真面目だった。
 つまり、本気、なのか。
「…何故そんなことを実の父親に告げなくちゃならない?」
 だからオレも真面目に聞いてみる。
「それが重要だからだ。今後、お前にどう動いてもらうか、決めるのに大事なんだ」
「え? 話が全然見えないんだけど」
「う~ん。はっきり言わなくちゃ、やっぱり分からないものか」
 親父は腕を組み、唸った。
「この会社、人材派遣であることは言ってあるよな?」
「あっああ」
 だからオレは普通に一般的な派遣会社を思い浮かべていた。
「その仕事内容だが、主に性的なものなんだ」
「………はい?」
 オレは自分の頭を疑った。
 耳が悪いのではなく、頭がおかしくなってしまったのだろうか?
「まあ他にもいろいろな場面で、必要とされればそこに人材を派遣するんだ。だが主な仕事はセックスの相手だな」
「それって…いわゆる売春…」
「それだけではないと言っているだろう? まあ簡単に言えば、プライベートで相手がほしい人に、こっちから人をやる。その内容は相手次第だが」
「つまり…普通の派遣会社は会社を通して人材を派遣するけれど、ウチの会社は個人で人材を派遣するってこと?」
「おおっ! のみ込みが早いな!」
 親父は嬉しそうだが、オレは体中の血が冷えていくのを感じていた。
 個人的な依頼内容…ということは、この会社、違法で引っ掛かるんじゃないだろうか?
 と言うか、とっくに警察が来てもおかしくないのでは?
「あっ、今、社会的なこと考えただろう?」
「常識的なことを考えてたんだっ!」
「まあ確かに何かに引っ掛かりそうな商売だけどな」
 アッサリ認めやがった!
 ヤバイ! 今すぐ退社した方が身の為だ!
 と言うより、この親父と縁を切った方がオレ自身の為だな。
「でも大丈夫。ウチは組織だから。個人であれば叩かれるけど、組織であれば大目に見られるんだよ」
 犯罪の匂いが濃いっ!
「上客の中には、ニュースで見る人達も多くいるしね」
 そして社会の闇の色も濃い!!
 親父はあくまでも笑顔で語る。
「この会社はかなり歴史があってね。わたしの世代からはじめたものじゃないんだよ」
「…どれぐらい昔なんだよ?」
「そうだねぇ。…遊郭があった時代から、かな?」
 ここは何百年の老舗かっ! 
 嬉しくない歴史だ…。
 がっくり肩が下がる。
「それなりに歴史もあるし、仕事も昔からのものだ。ただの風俗店と一緒にされては、困るなぁ」
 笑顔ながらも、眼が笑っていない。
 つまりそれだけ重い歴史があるということか。
 社会の闇…特に性欲は人間の三大欲求の一つ。
 それを満たす会社を、何百年も続けてくるにはそれなりの覚悟が必要なんだろう。
 オレは深く息を吐いた。
「プライベートの相手って…その、夜の相手の他にどんな意味があるんだよ?」
「う~ん、そうだね…。軽いものでは食事の相手。一人じゃ味気ないって言う人はかなりいるしね」
 あっ、そのくらいか。
「後はパーティーのパートナーもあるな。買い物の付き添いもあるし、旅行の相手ってのもある」
 なるほど。
 一人で過ごしたくない人の相手役か。
 そこら辺なら理解できる…が。
「まあ夜の相手の希望者の方が圧倒的に多いけどね。アハハ」
 …それが問題だ。
「そういうのってさ、素直に風俗店に行けばいいんじゃね?」
「分かってないね、お前は」
 ふと真剣な顔で、親父は声を潜めた。
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