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「それじゃあまず、お香を焚きますね。気分が悪くなったりしたら、遠慮なく言ってね?」
「分かりました」
 由香里さんは棚に向かい、お香の準備をはじめた。
 マッサージと言うより、エステに近いな。
 しかも女性エステ。
 でも悪い体験ではない。一度ぐらい、してみたいと思っていた。
 やがて部屋の中に、薄い煙と淡い匂いが漂ってきた。
 由香里さんはお香を入れた容器を、棚の隣にあるテーブルに置いた。
 薄紫色の煙から匂うのは、少し甘いけれどすっきりした花の匂い。
「どう? ウチの会社特製のお香の匂いは?」
「良い匂いですね。何か体の中がすっきりしそうです」
「気に入ってもらえて良かったわ。お香の選び方はお客様の状態によって変わるの。もちろんマッサージ師の好みも入るけどね」
「じゃあこのお香はオレに合っているんですね」
「そうだと嬉しいわ」
 花のように微笑み、由香里さんはイスを持って移動した。
 オレの頭の上の方で座る。
「じゃあまずは眼の疲れから取りましょう」
「よろしくお願いします」
「はい、お任せください」
 オレは眼を閉じ、由香里さんに身を預けることにした。
 オレは今まで、マッサージは気持ち良いものだと思い込んでいた。
 疲れた時は整体やマッサージに行くこともあったし、旅行では特に自ら進んでやってもらっていた。
 跡継ぎという立場から、いろいろと疲れていたのだ。
 多少痛い時もあったが、体がほぐされていくのは気持ち良かった。
 だから今回もそういうのを期待していたんだが、オレの口から出るのは…。
「いたたたたっ! 痛いです、由香里さん!」
「ん~特にここら辺が痛いでしょう?」
「痛いです、とっても!」
 …絶叫が部屋に響き渡っていた。
 昔、両親と韓国旅行へ行った時に受けた足つぼマッサージを思い出す。
 アレは効く所には、とんでもなく効く。
 よくテレビで見る光景そのものを、自分自身で再現してしまうぐらいに。
 絶叫を上げながら、悶えるのはまあ…ある意味AVと似ているかもしれない。
 けれど感じるのは痛みと熱のみ!
 しかも驚くべきことに、由香里さんはオレが暴れてもびくともせずにマッサージを続ける。
 頭から足裏まで、にこにこと癒しの笑みを浮かべながら、苦痛を与えてくるんだから、やっぱりウチの社員だ!
 見た目で騙されてはいけないと分かっていたのにぃ~!

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