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 ―三十分後。
 オレは俯せになりながら、ぜぇぜぇと肩で息をしていた。
 この疲れは全力疾走をした後に似ている。
 全身の筋肉が熱くなり、頭の中も真っ赤に染まる。
「お疲れさまぁ。どお? 大分疲れもほぐれたんじゃない?」
 答えたくても、声が出なかった。
 絶叫のし過ぎで、喉が渇いてしまったからだ。
 しかし由香里さんは半端ない怪力の持ち主だ。
 どんなに暴れても表情一つ崩さず、マッサージを続けていた。
 さすがはマッサージ部門の女性部長…その地位に相応しい実力の持ち主だ。
「それじゃあ次にいくわねぇ」
「えっ!? まだあるんですか?」
 ガラガラ声で顔を上げると、由香里さんは棚からピンク色の液体が入った瓶を取り出していた。
「今のは凝りをほぐしただけだもの。次はオイルマッサージで血流やリンパの流れを整えるのよ」
「それって…さっきみたいに痛いですか?」
「ううん。今度は痛くないから」
 …と言うことは、さっきのマッサージは痛いことを分かった上で黙っていたんだな?
 ……やっぱりウチの社員で、梢さんの親友だけはあるな。
 妙なところで感心してしまう。
「じゃあとりあえず、背中からいきましょうか」
「はい…」
 オレは脱力し、体の力を抜いた。



 ―十分後。
「はぁ…」
 心地良いため息が、口から出る。
 確かにオイルマッサージは気持ち良かった。
 強制的にほぐされた体が、今度は優しく丁寧に整えられていく。
 オイルはラベルにバラの花が描かれている通り、バラの匂いがした。
 肌に付くと意外とサラッとした感じで、それが由香里さんの柔らかな手で伸ばされていくのが、とても気持ち良い。
 さっきまで火照っていた体の熱も、今はじんわり温かい。
 ―だからオレは油断していた。
 由香里さんはマッサージを背中と首筋から始め、腕を一本ずつ丁寧に揉んでいく。
 そして腰に足も、指先まで余す所なく揉んでくれた。
「はい、じゃあ後ろはお終い。今度は仰向けになってくれる?」
「あっ、はい」
 あまりの気持ち良さに、夢見心地になっていたオレは何も考えずに仰向けになった。
「アラ」
 しかし由香里さんの眼が丸くなる。
 オレは彼女の視線の先をたどり…。
「うわっ!? すっすみません!」
 慌てて股間を押さえた。
「あっ、別に良いのよ。全身マッサージをすると血の流れが良くなって、そうなるのは自然なことだから」

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