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<会社の正体!>・2



「それなりに社会的地位がある人や、顔が売れている人が堂々と行けると思うかい?」
「それは…」
 行けない、だろうな。
「だからウチは名目上は『プライベートの相手』と言っているんだ。表立って『夜のお相手』を派遣しているとは言えないだろう?」
 一理あるので、思わず黙ってしまう。
「ウチにはそれなりに権力もある。うるさいところや、おしゃべりなところを黙らせることができるぐらいは、ね。だからゆっくりとプライベートを堪能したい人にとって、大事な会社なんだよ」
 …まあ性欲って大事、だよな?
 オレにはやっぱりよく理解できない。
 多分、淡白なんだろうな。
「で? オレが童貞かどうかなんて、どこら辺で関係あるんだよ?」
「それが一番重要なんだ」
「だからどこがっ!」
「仕事内容のことですよ。若様」
 梢さんが社長室に戻って来た。
 トレーに二つの湯飲みを持って。
 テーブルの前で跪くと、オレと親父の前に湯飲みを置いた。
 オレはお茶を一口飲んで、気分を鎮める。
「若様が社長になられるには、この会社の仕事全体を知らなければなりません。一番重要なのは、お客様にどのような相手を当てるかです」
「つまり、適材適所というのものだな?」
「その通りです」
 梢さんは立ち上がると、にっこり笑った。
「ここは人材派遣会社。人を見極めなければ、お客様のご要望に応えられることもできません。ゆえに若様には人を見る眼を養ってもらいたいのですわ」
「そう! わたしの言いたいことはそれだよ」
 親父が嬉しそうに手を叩く。
 …ホントかよ?
「だからお前の女性関係が重要なんだ。全く知らないというのは、欠点にしかならないからな」
 事情は分かった。
 理解はできたが…納得はできない。
「まあ深く言うと、女性のみならず、老若男女全ての性格を見抜ける人間になってほしいんだ。まずは観察力をみがき、経験を積むのがお前の仕事だ」
「つまり客の要望に応えられる人間を、ちゃんと見出せってことだろ? それなら親父の仕事を見て、学べばいいだろう?」
「いや、わたしの仕事を見ているだけではダメだ。ちゃんとお前自身の感性をみがかなければ、意味がない」
「チッ!」
 あまりにハッキリとした親父の言い方に、思わず舌打ちをする。
「で? どうなんだ?」
「…童貞、じゃない。中学の時に、捨てた」
 渋々答える。
「付き合った人数は?」
 そこまで言うのかよ。
「……三人」
「三人か。少ないな」
 余計なお世話だっ!
 しかし文句を言うよりも前に、昔の苦い思い出がよみがえった。
 付き合ったのは三人。
 いずれも肉体関係はあった。
 けれど長続きはせず、一年も経たないうちに別れた。
 …三人とも、だ。
 いつもオレがフられる立場だった。
 しかし彼女達は涙を浮かべながら、オレにこう言った。
「あなたはアタシのことを愛していない!」
 そういうつもりは、無かった。
 けれど強く否定もできなかった。
 来る者を拒むことなく受け入れてきたオレは、多分まだ真剣に人を愛したことがない。
 原因は将来のことだった。
 親父の会社を継ぐという自覚は、物心つく前からあった。
 そのことで頭がいっぱいで、普通の恋人関係が上手くいかなかった。
 そりゃそれなりに、彼女達のことは好きだったけど、夢中にはなれなかった。
 それは性生活にも出てて…。
 …あっ、落ち込んできた。

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